2005年07月24日
ラブ・フォーティ 第13話 〜イメージ〜
(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )
第12話より続く
「宴会ですよ」
新田は軽いめまいに襲われた。かろうじて体の安定を保った。喉がからまった。
「えっ、“宴会”?」
「はい。新田さんが“宴会部長”と称するものを初めてやったときの宴会ですよ。覚えてますか?」
よく覚えていた。新田が28歳のときだった。
会社全体の宴会はそれまで総務部の誰かが司会を受けもっていたが、盛りあがりに欠けるという社長からの意見で、ほかに候補を見つけていた。そこで、元気がよくて、しかも社内で人気のある人物ということで新田が選ばれたのだった。
「まさかあれから10年以上も続けてやらされるとは思っていなかったよ」
「それは評判がよかったからですよ。新田さんは何事においても手を抜かないですからね。結局、“新田宴会部長”は当社の名物になった」
「ところが、それがよくなかった?」
「結果的にはそういうことになるらしいんです。その人によれば……」
新田が軽く手を立ててさえぎった。
「ちょっと待て。さっきから“ある人”とか“その人”とか……。それはいったい誰なんだ?」
「それはあとで明かすことにします」藤永の目が意味ありげに笑った。「その人によれば、新田さんのいい面……誠実さ、人望の厚さ、気配りのよさ……などを、すべて逆手にとって宴会部長というおどけたイメージにすりかえ、優秀な営業マンという像を崩しにかかった犯人がいる、ということです」
「“犯人”?」
「そうです。当時なぜ新田さんが宴会部長になったか、そのいきさつを新田さんご自身はご存じなんですか?」
「総務部長が人選して僕になったと聞いているけど……」
「それはありえないんです」
新田の首筋に寒いものが走った。
「“ありえない”?」
「その人の話だと、当時、総務部長はたいへんに腹を立てていたそうです。自分の部下では役に立たないと言われたわけですから無理もないことです。それも社長のほとんど個人的趣味の範囲で言われたのですから、なおさらのことです。総務部長は“部外の人選は自分には荷が重いので辞退する”と言ったそうです。ま、へそを曲げたわけです。しかしながら宴会そのものは総務部の管轄でおこなわれているわけですから、総務部長のボイコットは、たかが余興と言うには深い問題をはらんでいたようです。ここで、ひとりの切れ者が登場します。安斎課長です」
続き(第14話)を読む
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第12話より続く
「宴会ですよ」
新田は軽いめまいに襲われた。かろうじて体の安定を保った。喉がからまった。
「えっ、“宴会”?」
「はい。新田さんが“宴会部長”と称するものを初めてやったときの宴会ですよ。覚えてますか?」
よく覚えていた。新田が28歳のときだった。
会社全体の宴会はそれまで総務部の誰かが司会を受けもっていたが、盛りあがりに欠けるという社長からの意見で、ほかに候補を見つけていた。そこで、元気がよくて、しかも社内で人気のある人物ということで新田が選ばれたのだった。
「まさかあれから10年以上も続けてやらされるとは思っていなかったよ」
「それは評判がよかったからですよ。新田さんは何事においても手を抜かないですからね。結局、“新田宴会部長”は当社の名物になった」
「ところが、それがよくなかった?」
「結果的にはそういうことになるらしいんです。その人によれば……」
新田が軽く手を立ててさえぎった。
「ちょっと待て。さっきから“ある人”とか“その人”とか……。それはいったい誰なんだ?」
「それはあとで明かすことにします」藤永の目が意味ありげに笑った。「その人によれば、新田さんのいい面……誠実さ、人望の厚さ、気配りのよさ……などを、すべて逆手にとって宴会部長というおどけたイメージにすりかえ、優秀な営業マンという像を崩しにかかった犯人がいる、ということです」
「“犯人”?」
「そうです。当時なぜ新田さんが宴会部長になったか、そのいきさつを新田さんご自身はご存じなんですか?」
「総務部長が人選して僕になったと聞いているけど……」
「それはありえないんです」
新田の首筋に寒いものが走った。
「“ありえない”?」
「その人の話だと、当時、総務部長はたいへんに腹を立てていたそうです。自分の部下では役に立たないと言われたわけですから無理もないことです。それも社長のほとんど個人的趣味の範囲で言われたのですから、なおさらのことです。総務部長は“部外の人選は自分には荷が重いので辞退する”と言ったそうです。ま、へそを曲げたわけです。しかしながら宴会そのものは総務部の管轄でおこなわれているわけですから、総務部長のボイコットは、たかが余興と言うには深い問題をはらんでいたようです。ここで、ひとりの切れ者が登場します。安斎課長です」
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Posted by love40 at 15:23
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