2005年07月24日
ラブ・フォーティ 第43話 〜コントロール〜
(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )
第42話より続く
「……安斎?」
「そういうことだ。もう、うすうす感じるだろ? おまえが宴会部長をやるハメになった一件で安斎が陰で動きまわっていたことは、藤永から聞いてるよな。安斎、田丸……、この線で何か感じないか? たとえば、おまえが宴会部長をやるとき、田丸がやけに協力的だったとか……?」
新田はぞっとした。そのとおりだった。田丸がいるころは、彼にずいぶんアイデアをもらって宴会を盛りあげたものだった。
芳賀は眉根を寄せ、やや深刻な面もちで話を続けた。
「じつは5年ほど前に田丸とばったり会ったんだ。見る影もないほどすさみきっていたよ。その日は一緒に飲んだ。田丸は酔いにまかせて当時のことをいろいろ話してくれた。
要は、安斎にうまく乗せられたという言い方だったな。野球部設立反対案も、新田宴会部長案も、安斎が言いだしっぺで、安斎の意見に同調したからこそ、田丸は協力したそうだ。つまり、野球部ができればやがてそこが遊興の巣となって、多喜食マンのモラルが低下すると信じたことや、新田が宴会部長をやることは本人の自己アピールのためにも、また社内各部の相互交流のためにもいいと思ったことなど、そのたびに自分はいいことをやっていると思いこんで、安斎とふたりして、春日専務に掛けあったと言っていた」
「すべては安斎が動かしていた、ということですか?」
「おそらく。うまくコントロールされたんだろうな。ま、とにかく、俺の夢だった野球部はそうやってつぶされたことがわかった。同時に、新田宴会部長誕生のいきさつもわかったわけだ。で、俺は考えた。どうして安斎は野球部をつぶし、宴会部長をつくったのか……。
いろいろ考えたすえに出た結論は、こういうものだった。当時の営業部で俺も新田もけっこう頑張っていた。いわば安斎のライバルだ。たとえば、この俺が野球部でかなりの人数を従えてリーダーシップを発揮していたら、それがプラスとなって、職場でもさらにいいポジションに到達できていたのではないか、と。
新田にしたって、宴会部長などという色ものをやっていなかったら、いまとは違う境遇に身を置いていたのではないか、と。どうだい、この推理は? ま、現実には、安斎が営業1課の課長様だ。そして俺は営業2課課長で、さらに新田は食研だ」
沈黙がさした。
川の流れが耳を引いた。
芳賀の口調が変わった。
「ところで、新田は“春日杯”というのを聞いたことあるか?」
「カスガハイ? 何ですか、それ?」
「春日専務が個人的に主催して、来年テニス大会を催す予定になっているんだ。もっとも、来年は“春日社長”だろうけどな」
「いいえ、まったく知りませんでした」
新田はかぶりを強く振った。自分の無知ぶりが嘆かわしかった。
芳賀が口もとに含み笑いをためながら言った。
「知らないのも無理もないことさ。俺も、藤永探偵から教えてもらったんだ。これも5年ほど前の話だ。当時、藤永は営業1課を追いだされ、2課がもらい受ける形となって、俺が面倒を見ていたんだが、そうこうするうちに、あいつがいろいろ情報を持ってくるようになったんだ。変なヤツだよ。情報を集めて何かするというわけじゃないんだな。情報が好きなんだよ。で、その情報のひとつに“春日杯”があった。藤永が1課にいるころに安斎から直接聞いたらしい。つまり5年以上も前に、春日専務が社長になったら、ちょっとしたイベントとしてテニス大会をやろうという計画ができていたわけだ。用意周到というか、凄い話だよ。この計画の推進者はもちろん安斎だ」
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第42話より続く
「……安斎?」
「そういうことだ。もう、うすうす感じるだろ? おまえが宴会部長をやるハメになった一件で安斎が陰で動きまわっていたことは、藤永から聞いてるよな。安斎、田丸……、この線で何か感じないか? たとえば、おまえが宴会部長をやるとき、田丸がやけに協力的だったとか……?」
新田はぞっとした。そのとおりだった。田丸がいるころは、彼にずいぶんアイデアをもらって宴会を盛りあげたものだった。
芳賀は眉根を寄せ、やや深刻な面もちで話を続けた。
「じつは5年ほど前に田丸とばったり会ったんだ。見る影もないほどすさみきっていたよ。その日は一緒に飲んだ。田丸は酔いにまかせて当時のことをいろいろ話してくれた。
要は、安斎にうまく乗せられたという言い方だったな。野球部設立反対案も、新田宴会部長案も、安斎が言いだしっぺで、安斎の意見に同調したからこそ、田丸は協力したそうだ。つまり、野球部ができればやがてそこが遊興の巣となって、多喜食マンのモラルが低下すると信じたことや、新田が宴会部長をやることは本人の自己アピールのためにも、また社内各部の相互交流のためにもいいと思ったことなど、そのたびに自分はいいことをやっていると思いこんで、安斎とふたりして、春日専務に掛けあったと言っていた」
「すべては安斎が動かしていた、ということですか?」
「おそらく。うまくコントロールされたんだろうな。ま、とにかく、俺の夢だった野球部はそうやってつぶされたことがわかった。同時に、新田宴会部長誕生のいきさつもわかったわけだ。で、俺は考えた。どうして安斎は野球部をつぶし、宴会部長をつくったのか……。
いろいろ考えたすえに出た結論は、こういうものだった。当時の営業部で俺も新田もけっこう頑張っていた。いわば安斎のライバルだ。たとえば、この俺が野球部でかなりの人数を従えてリーダーシップを発揮していたら、それがプラスとなって、職場でもさらにいいポジションに到達できていたのではないか、と。
新田にしたって、宴会部長などという色ものをやっていなかったら、いまとは違う境遇に身を置いていたのではないか、と。どうだい、この推理は? ま、現実には、安斎が営業1課の課長様だ。そして俺は営業2課課長で、さらに新田は食研だ」
沈黙がさした。
川の流れが耳を引いた。
芳賀の口調が変わった。
「ところで、新田は“春日杯”というのを聞いたことあるか?」
「カスガハイ? 何ですか、それ?」
「春日専務が個人的に主催して、来年テニス大会を催す予定になっているんだ。もっとも、来年は“春日社長”だろうけどな」
「いいえ、まったく知りませんでした」
新田はかぶりを強く振った。自分の無知ぶりが嘆かわしかった。
芳賀が口もとに含み笑いをためながら言った。
「知らないのも無理もないことさ。俺も、藤永探偵から教えてもらったんだ。これも5年ほど前の話だ。当時、藤永は営業1課を追いだされ、2課がもらい受ける形となって、俺が面倒を見ていたんだが、そうこうするうちに、あいつがいろいろ情報を持ってくるようになったんだ。変なヤツだよ。情報を集めて何かするというわけじゃないんだな。情報が好きなんだよ。で、その情報のひとつに“春日杯”があった。藤永が1課にいるころに安斎から直接聞いたらしい。つまり5年以上も前に、春日専務が社長になったら、ちょっとしたイベントとしてテニス大会をやろうという計画ができていたわけだ。用意周到というか、凄い話だよ。この計画の推進者はもちろん安斎だ」
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Posted by love40 at 16:27
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