2005年07月25日

「酒と泪と男と会社」drink12:一流の酔っぱらい


“優秀な酔っぱらい”になるために、あなたがすべきことは何なのか? この問いを解くために、まずはスポーツの世界を参考に考えてみたい。

 優秀なスポーツ選手は、自分が負けた試合から多くを学びとる。その意味で彼らは負け試合をけっして忘れることなく、細部にいたるまで明確に覚えている。心に傷として記憶するのではなく、頭にデータとして記録する。後悔するのではなく、じっと分析する。タフでシャープな頭脳を持っていることが一流スポーツマンの条件である、と言われるゆえんがそこにある。

 敗因はどこにあったのか。今後の対策はどうすればいいのか。そのためにはトレーニングをどのように強化すべきなのか……。それらの課題をひとつひとつクリアし、次の試合に臨む。良きことは繰りかえせ、悪しきことは改めよ、と。

 つまり、飲むときも同じことをすればいいのだ。
“優秀な酔っぱらい”になるためには、自分の今までの試合(飲み会)を思い出し、整理し、分析しなければならない。まずは、「いい酒だった」という日と、「思い出すのもイヤ」な日に分類し、頭の中に浮かべる。それから、ひとつひとつ分析する。

「いい酒だった」のはどうしてか──気の合う友だちと飲んだから? ツマミが多かったので豊かな気分で飲めたから? いい話が聞けたから? カラオケが楽しかったから? それとも、帰りの電車の中でたまたま美女のとなりに座れたから?
 反対に、悪い酔い方をしたのはどうしてか──ひどい店に入ってしまったから? 上司の説教攻撃を浴びつづけたから? 空腹で飲んでいっきに酔ったから? 日本酒とウイスキーのチャンポンをやったから? 見知らぬ客と不毛な口論をやったから?
 さあ、どんどん、あなたの飲み歴を分類して、リストに載せてみよう。

 では、あなたにとって最も思い出深い、最良の酒は──豪奢なホテルのラウンジで、彼女に愛の告白をしたあの夜の酒? 昇進が決まった夜の、妻との祝杯? 十年ぶりのクラス会の2次会? それとも、夜道を千鳥足で歩いているうちに足をとられてすっころんで、思わず手をついたところに財布が落ちていて、その中に信じられない大金が入っていた、なんてときの狂喜乱舞の酔い?
 人の数だけ、酔いの数だけ、いろいろあるはずだ。さあ、もっとリストアップだ。

 では、あなたにとって「最悪の酒」「最悪の酔い」を思い出してみよう。スポーツで言えば、最低の負けを喫した日のこと。屈辱の惨敗。ぜったい犯してはならないウルトラミス、醜態中の醜態をさらした日のことだ。あなたの最弱点が詰まった日だ。最悪の試合こそ念入りに分析し、対策を講じ、次のベスト・ゲーム(飲み会)につなげなければいけない。これが最も大事なことだ。
 さて、あなたの「悪酔いワースト1」は? 「………………………」 おや、どうしました? あなたがもっとも悔やんでいる酔いを、明確に思い出していただきたい。「………………………」

 あれま、あなたははっきりと思い出せないようだ。そう、真に最悪の出来事は、つねに泥酔のかなたで起こっていることが多いから、あなたは思い出せないのだ。思い出せないから、分析もできない。分析できないから、対策を講じることもできない。残念ながら……。

 悪酔いしないために空腹で飲まないとか、チャンポンをしないとか、いやなヤツとは飲まないとか……そういった一般的な「悪酔い防止策」はある。しかしそれらは、悪酔いしないための「条件」にしかすぎない。「原因」ではない。最低最悪に酔わせしめるのは「条件」ではなく、何らかの「原因」だ。それは、あなたの心の奥深いところで揺らめく何かかもしれないし、運命という名の小石につまづくことかもしれない。何があなたをそうさせたかは、あなた自身でないとわからない。

 ところが、そのあなた自身が、あなた自身のことなのに、覚えていないことがあまりにも多いのだ。「すごく酔っていて…… 気がついたら…… あそこで…… ああ、なんで……」 感情の断片や記憶の残骸が、あなたの体の中に残ってはいるが、「なんで、あんなことをしたんだろう?」という疑問には、それらははっきりとは答えてくれない。あなたの中に再検討するだけの確たる記憶がほとんどないから……

 最悪の酔いというのは、自分でも信じられない形で勃発するものだ。原因は、酔いという霧のなかで混沌と霞むばかり。あなたがそのときシラフで、明敏な頭脳と冷徹な観察力を持ち合わせていれば話は別だが、あなたはその逆のベロベログデングデン状態だったのだ。思い出そうにも、記憶はすでに失われている。まるで、あらかじめ百ピースほど紛失しているジグソーパズルを、脈略なく組み立てているような徒労感と虚無感……。
 だから、分析できない、対処できない、善処できない。後悔という感傷はあっても、反省という分析はない。心に傷として記憶することはあっても、頭にデータとして記録することはない。
 だから、“優秀な酔っぱらい”には、なかなかなれないのだ。

 スポーツの世界に「一流」はたくさんいるけれど、酔っぱらい界には、残念ながら「一流」と呼ばれる人は稀なのである、以上のような理由で。


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飲酒量は適量ですか?【LOVE!iMAGE??私の買い物事情】at 2005年11月03日 18:44