2005年07月25日
実家の食卓の、その上に
“おふくろの味”についてウダウダ考えていたら、突然、僕の頭の中にホッケがバァ〜ンと浮かんだ。「なるほど、ホッケか」と僕はひとりごとを言いながら、苦笑してしまった……。
母は、いわゆる家庭料理というものはひと通り何でも作る人だ。いまや70歳を超える高齢であるが、手間を惜しむこともなく、また本人に好き嫌いもなく、煮物、焼き物、揚げ物、炒め物、生の物など、さまざまなものを作って食卓を賑わす。
最近は「みのさんが教えてくれた健康料理よ、これ!」と、新種が加わっていることもある。遊びに行った僕と妻と娘は苦笑する。
とにかく母は、フツーの家庭料理をフツーに何でも作り、にこやかに食べる。
そんな母だが、たったひとつダメなものがある。それが、ホッケ。
僕にとってホッケとは、「食べるのに、ほどよくデカい!」ことが嬉しくて、大好きの部類に入る魚である。たとえばサンマなどとくらべると、はるかにボリュームがあって、バクバク喰えるワイルド感がたまらない。
ホッケは北海道が本場らしいが、いまや全国的に認知度の高い魚だと聞いている。少なくとも東京では、ここ2〜30年の間にかなりポピュラーな魚になった。ということは、逆に言えば、それ以前ホッケは東京ではお目にかからなかったのだ。
僕の記憶の限りでは、最初は当時新興の居酒屋チェ−ン店で酒の肴として登場したのが最初だった。つまり、東京の家庭料理にホッケはなく、その居酒屋チェーン店で大々的に東京デビューを飾った──はずだ。
したがって、東京生まれで、しかも居酒屋に行くことのなかった母は、割合と最近までホッケというものに出会わなかったのだ。ところが、ある日、息子夫婦である我々と居酒屋に行く機会があり、そこで初めて実物のホッケにご対面!となったわけだ。
その時の母の第一声「あら、まあ、ワラジのように大きなお魚だこと!」
僕にとって「食べるのに、ほどよくデカい!」ホッケが、母にとっては「ワラジのように大きなお魚!」だったわけだ。この第一印象は、母のホッケ観に大きな影を落とすことになる。その日その居酒屋で、やや引きぎみの母にホッケを食べさせたのだが、「モサモサする」と言って、ひと口で箸を置いてしまった。
その後、北海道出身者にこの時の話をすると、「今は必ずしもそうではないけど、東京で喰うホッケは質が悪いことがあって、確かにモサモサしてマズいのがあるから気をつけて」との忠告。しかし、それも、あとの祭り。
僕は、あの日の“母vsホッケ”の出会いをいまだ悔いている。もうちょっとじょうずに“お見合い”をさせることができれば、“母vsホッケ”にも蜜月期がおとずれたかもしれない。
母は今でもホッケを食べない。食べないし料理をすることもない。したがって、実家の食卓を飾ることもない。
いつでも僕たちを歓迎してくれ、何でも食べることのできる、“おふくろの味”満載のテーブルなのに、ホッケだけはいまだに姿を見せない。
皮肉なことだ。“おふくろの味”を考えていたら、ホッケを思い出してしまった。
僕がもっとじょうずに、もっと本当にうまいホッケを食べさせていたら……。
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Posted by love40 at 16:03
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