2005年07月25日
卒業証書に僕が託したこと
毎年、卒業式の季節になると、卒業式に行かずにパチンコをしていた自分を思い出す。
情けない18歳。卒業式に行かずにパチンコに大負けした18歳。でも、恋には勝ちたい一心の18歳だった。
そもそも卒業式に出なかったのも、ある女の子の気を引きたかったばっかりの、超コソクな手段だった。
卒業式の前日、同じクラスのその女の子に電話をして「悪いんだけどさあ、オレ、あした卒業式行かねーから、卒業証書受け取って、預かっててくんねーかな?」
「なんで、私が?」
「男は信用できねーからな」
「女子はほかにもいるじゃないの?」
「………話しやすいヤツって、おまえしかいないんだよ」(←これ、本当)
「………わかった。で、いつ渡せばいいの?」
いつ渡すか? これが、じつは問題なのだ。僕はあの時、できる限り彼女に持っていてほしかった。そうすれば、少なくともその間だけは、彼女と僕には卒業証書という“きずな”があるからだ。
そのきずなを1日でも長く保っていたかった。
彼女に持っていてもらって、そのあとどうすればいいのか僕はまったく考えていなかったけど。
あの時は、ただ、きずなを持っていたかった。
だから会ってはいけなかった。
会えば、その日が卒業証書の受渡日となって、きずなは消滅する。
電話の向こうで困惑ぎみの彼女に、僕は言った「また電話するよ」
あきらかに困った声で、でも、まじめな彼女は「わかった」と言ってくれた。
彼女は大学が決まっていた。僕は浪人が決まっていた。
彼女はかなり可愛くて(学年の人気ランキングで2位だったかな)とてもモテたから、これから自由の多い学生生活はもっと楽しくなるだろう。それにくらべて、この僕は高校3年生だというのに、渋谷ならツケで酒が飲める店が5〜6軒はあるというテイタラク。ジャズバーやら焼鳥屋やら赤いジュータンのスナックやらで飲み回っていた。あの頃の僕は、いったい何をしていたんだろう?
彼女と僕は、同じ18歳なのに、まるで光と影のように違う道を歩んでいるように僕には思えた。
卒業式から1年半後。彼女が「どうしても卒業証書を渡したい」と言うので、会って受け取ることにした。
「どうしても」の理由はよくわかっていた。カレができたのだ。たしか青学の4年生だったかな?
渋谷で彼女と会った。すぐ近くまでカレの車で来たんだと言う。「じゃあ、カレを待たしちゃまずいよね」と僕は言った。
「そうだね」
「こんな卒業証書持ってて、ヘンだと思われなかった?」
「言われた」
「だよな」
僕らは笑って、そして手を振って別れた。
その日、僕は昼間からさんざ飲んでいたのだけど、手を振っている時は、ぜんぜん酔っていなかった。
もう片方の手に持つ包み紙の中の秋の卒業証書が、やけに恥ずかしく思えたのを覚えている。
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Posted by love40 at 17:28
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