2005年07月25日

映画「タイタニック」の中の“別れ”


“別れ”を扱った映画はたくさんあって、そのどれがいちばん印象に残っているかとなると、僕は迷ってしまう。

1作だけ挙げるのは、あまりにもむずかしい。たとえば『グッド・ウィル・ハンティング』に描かれている“別れ”は、僕の胸に深く残っているものではあるけれど、それと同じくらい印象深い作品はほかにもある。

凡庸な言い方だけど、“別れ”の数だけ、ドラマがあるってことか……。

年をとりオヤジとなった今、人との離合集散を数多く巡ってきたせいか、僕は“別れ”にだけは目が肥えてしまったのかもしれない(苦笑)。もうほとんどスターバックスのカスタマイズメニューばりに、“別れ”を選り分けられますもんね!
「アイス・ダブル・トール・ヘーゼル・ナッツ・カフェモカ風の“別れ”」とか……
「ダブル・ショート・キャラメル・ラテ仕立ての“別離”」とか……(←なんて書いてますが、ぜんぜんわかってません〈笑〉)

そこで、この際、たくさんの“別れ”をいっきに映し出している映画を、ちょっと思い出してみた。1997年公開、ジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』だ。この作品に関しては、あらためて内容を説明する必要はないだろう。
レオナルド・ディカプリオ演じる「ジャック」と、ケイト・ウィンスレット演じる「ローズ」のラブ・ストーリーだ……が……しかし、ここでは、彼と彼女は脇役に回ってもらって、ほかの人々に目を向けてみる。

この映画のクライマックスは、氷山激突から沈没に到るまでのパニックの連なりで、このパニックが乗船者たちに生死を振り分けていく。
生死の矛先は、あからさまに貧富、男女、老若などを区分けし、さらに強運と不運、強欲と無欲をへだて、家族や恋人や友人たちを引き裂いていく……。

そして、つまり、そこに“別れ”が生じる。
妻子のみを救命ボートに預け、自分の死を覚悟する男。
逃げられぬと知り、わが子をベッドに寝かしつけ最後のおとぎ話を聞かせる母親。
救命ボートになだれ込む人々を制するために、暴徒を撃ち殺すが、その責務に耐えかね、自分への“別れ”つまり自殺を遂げる航海士。
最後まで船上で演奏を続け、演奏を続けることで互いに“別れ”を告げ合う楽士たち。
そして、急速に傾きゆく船の甲板で、人々の手を握り、最後の祈りをあげる牧師の声──
「神が彼らの涙をぬぐうと、死は消え去った。
 悲しみも苦しみもすべて消え去り、
 先のものは過去となった」

彼らひとりひとりの“別れ”は、映画の中ではほんの数秒のシーンだけれど、それはジャックとローズの“別れ”と同じように、僕の胸を打つ……。
僕にとって、『タイタニック』とはそういう映画なのだ。


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『タイタニック』 1997年アメリカ(189分) 監督:ジェームズ・キャメロン 脚本:ジェームズ・キャメロン 出演:レオナルド・ディカプリオ    ケイト・ウィンスレット    ビリー・ゼイン    キャシー・ベイツ    フランシス・フィッシャー ...
タイタニック【WILD ROAD】at 2006年01月07日 17:31