2005年07月26日
昔々こんな有名人に出会った
僕がいちばん最初に遭遇したスターは、林家三平さんだった。
知り合いのおじさんに連れられて、錦糸町の駅前でヘビ使いの芸(←なんか凄い時代!)を見てから、ラーメンか何か食べようということで街なかを歩いていたら、白いマスクをした三平師匠に出くわした。口もとを隠していても、あの独特な髪型ですぐバレてしまい、誰かが酔った声で「ヨ〜シ〜コ〜サ〜ン、こっち向いて〜〜〜」と歌うと、三平師匠は無表情のまなざしで、さっと身をかわすように雑踏へまぎれ込んでしまった。
お笑い芸人がいつも笑っているわけではないことを、子どもの僕はそのとき知った。
次に遭遇したスターは、ショーン・コネリーだった。
『007は二度死ぬ』の撮影で来日し、中野坂上の駅でロケをするということを聞きつけ、(またもや前述の)知り合いのおじさんが夜中に連れていってくれたのだ。ショーン・コネリーと浜美枝が、スポーツカーで駅に乗りつけるというシーンだった。僕は生の“ジェームズ・ボンド”に大感激するとともに、トイレ専用車と思われる(たぶん英国製の)ロケバスの存在に、子どもながら「さすが紳士の国!」と感心した覚えがある(←40年ほど前のことなので、かなりアヤフヤ)。
その後、大人になるにつれて新宿・渋谷あたりをフラフラするようになり、いろいろな有名人を見かけるようになるのだけれど、僕にとって一番忘れられない出来事となると、次に書く有名人との“出会い”になるだろう。
ショーン・コネリーほど大昔ではないけれど、これもすごーーーく昔の話。今から20年ほど前のこと。
ある夏の日、僕は原宿の表参道から路地へ折れ曲がり、ごちゃごちゃとした道を歩いていた。住宅街の中のあるデザイン会社へ、打ち合わせのために向かっていたのだけれど、もの凄く暑い昼下がりで、そのあたりを歩いている人はまったくいなかった。静まり返った住宅街を進むと、やがて一本道がしばらく続く所へと出た。
まっすぐの道だから、前方から人が来ればすぐにわかる。僕は仕事のことを考えながら歩いていたのだけれど、ふと前方を見やると、とても小柄な女性がひとり、ややうつむき加減で歩いて来るのが見えた。「あれ?」と思った。どこかで見たことのある女の子だなと思いながら、わりとあけすけにその女性を眺めながら歩いた。そのあいだにも2人の距離は縮まっていく。
僕の視線を感じたのか、その女性がちらと目を上げ僕を見た。2人の視線が交わった瞬間──つまりそれは彼女の“カメラ目線”とも言うべきもので、僕はまるでテレビ画面を見入るように──疑いようもなく、こちらへ向かって歩いてくる女性が小泉今日子さんだと気づいた!
えええええええ! キョン……キョン……だ……!
「小泉今日子」とは言わず「キョンキョン」と誰もが呼んでいた頃だ。
そのキョンキョンが、ふたたび視線を落とし、短めの髪に顔を隠すようにうつむき、控えめな気配をただよわせて歩いてくる! 彼女も僕も逃れようのない一本道。どんどん縮まる2人の距離……
その時、僕はある大問題に気づいた。
いったい僕は、前方に近づくスーパーアイドルにどのような態度をとればいいのだろうか、と。
日本人なら知らぬ者はいない超有名人に対し、素知らぬフリをして通り過ぎるのはいかにも不自然に思えた。かといって、すれ違いざまにこちらから話しかけて、怖がられたりでもしたら困る。
彼女のほうは芸能人として、こういうことに慣れているのかもしれない。にしても難儀な話だ。目の前にいる男は間違いなく自分のことを知っている、と知っていながら、知らないと割り切る、というまだるっこしさ。
結局、僕はギクシャクギクシャク歩きながら、その路上に“キョンキョンはいない”ものとして振る舞った。
ひとけのない住宅街の一本道で、スーパーアイドルと1対1で遭遇してしまうという稀有な体験は、なぜかスーパーアイドルの孤独をいただいてしまったような寂しさがあった。
その寂しさは今でも消えていない。
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Posted by love40 at 07:19
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