2005年07月26日

「読書感想文」本の選び方:よく見よ(笑)

「赤いセーターと読書は、女のもの」と思っていた子供の頃の僕にとって、夏休みの宿題の“読書感想文”は、拷問以外の何ものでもなかった。

小学6年の夏休みの時も、結局は読書感想文のみを残して8月31日を迎えていた。あと1日しかないというのに、まだ読む本さえ決まっていない(学校からの課題はなく、自由読書だった)。
とにかく本屋へ行った。きっとうつろな目をして本棚を見回していたのだと思う。僕はなるべく“簡単で”“楽しく”読めるものにしようと思った(←当然すぎる判断〈笑〉)。

ところが、本を読み慣れていないということはじつに恐ろしいもので、僕は“小さい本”(つまり、文庫本)のほうが文字量が少ないはずだから、大きい本より“簡単に”読めるだろうという、とんでもない判断をしてしまう。その段階で、児童文学的なものではなく大人の本棚に迷い込んでしまったのだ。

そして、“楽しい”本を探し始めた。どうやって? そりゃあ、題名しか頼れるものはないわけで……。背表紙のタイトルをひとつひとつ吟味した。本嫌いの小学6年生が考えつく最善は尽くしたとは思うよ、ウン。

で、僕は一冊の本を選び出した。なかなか興味深い題名で、本嫌いの僕がすっかり気に入ってしまった。
先ほども申し上げたように、僕は本というものを読んだことがないので、当然ながら本を買ったこともない。ということもあって、僕は、本を買うとき事前に内容を少しでも読んでみるということを思いつかなかったのだ。リンゴを買うとき店頭で勝手に味見するヤツがいないのと同様に、あらかじめ本を少し読んでみるなどという行儀の悪いことなどできるわけがなかった(どーゆー理屈だよ〈笑〉)。

僕は一冊の本を買った。何を? ジャジャジャーーーン! 倉田百三の『出家とその弟子』(新潮文庫)を。
僕は勇んで家へ帰った。「きっと、楽しいぞ、これは」と思いながら。

そして、同日、夕刻。僕は予想外の苦しみの中にいた。『出家とその弟子』が、予想外に面白くなく(てゆーか内容がぜんぜんわかんないし)、しかも小さい本なのに(笑)予想外にボリュームがあって前へ進まない。
ひと部屋向うでは、母親が夕飯の用意をし始めている。え! 夕飯! もう夜?
僕は額に脂汗を浮かばせ、数時間にわたる戸惑いはやがて苛立ちに変わり、さらには不安へと落ち込む中で、もう一度本の題名を見つめた。
そして、あんぐりと口を開けた。

な、な、な、な、なんだ〜〜〜、この本は!!!!

『出家とその弟子』?

僕は、その本の題字に、自分の知らない言葉を発見していた。「出家」? 「でいえ」って何よ?
そう、僕はとんでもない勘違いをしていたのだ。
僕があの時あの本屋で買った本の題名は、「出家(しゅっけ)」ではなく「家出(いえで)」のはずで、『家出(いえで)とその弟子』のつもりだったのだ。

『家出(いえで)とその弟子』とは、なんと背徳の香りただよう題名なのだろう! 小6の僕は、この不道徳極まりないタイトルに見入って、まんまと買ってしまったのだ。なのに……

『出家(しゅっけ)とその弟子』とは……。坊さんだってよ……。
親鸞の『歎異抄』の教えを戯曲化した宗教文学の名作って言われても、小6の本嫌いのガキには、ただただ鬱陶しいゴニョゴニョした文字列でしかないわけで……。
その夜、僕は、母から30分ほど夏目漱石の『坊ちゃん』を“取材”して、苦しまぎれな感想文を書いた。

あれから数十年が経っているが、あの時のドロナワ人生がなおも続いている(涙)。

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