2005年07月26日

パンダ物語


たいへん短い記事なのだけど、なかなか面白い内容なのでご紹介したい(読売新聞配信:2005年5月4日0時41分)。
見出しは『台湾総統、パンダ受け取りに否定的……国内取引扱い警戒』というもの。ほんとに短いので、全文を載せよう──

『台湾の中央通信によると、陳水扁総統は3日、外遊先のキリバスで、中国が贈呈を発表したパンダについて、「多くの人が歓迎しているが、(パンダを保護する)国際条約に違反できない」と述べ、慎重に判断する考えを表明した。「国際条約」に言及したのは、中国がパンダ贈呈を「国内取引」として扱うことへの警戒感があるためだ。』

この記事を読んでいて、僕は「なるほど、外交というのは、こういうものなのか」とあらためて感心した。
記事の背景などをかいつまんで説明すると、この1週間ほどの間に、台湾の最大与党である国民党の連戦主席が訪中し、さらに引き続いて、第2野党である親民党の宋楚瑜主席が訪中する。この流れを“両岸(中台)接近”ととらえて、中国側が「パンダ、あげる!」と申し出たわけだ。中国お得意の“パンダ外交”だ。
すると、中国の贈呈表明に対して、陳水扁総統(←台湾側のトップね)は「パンダがワシントン条約で保護対象の動物であるから、受け取らない」という考えを示したのだ。

ワシントン条約はご存じのとおり、絶滅のおそれのある野生動植物の保護を目的とした国際条約で、そのもとに、絶滅危険度の高いパンダは国際間の取引が制限されている。
さて、この“国際間の取引の制限”という部分がたいへん重要で、仮にこれが“国内”であれば無問題(モウマンタイ)なわけだ。つまり中国としては「中国と台湾は一つの国なのだから、パンダ贈呈の件は“国内行為”でモウマンタイなのだ」というリクツを立てることができる。

逆に、自国独立を標ぼうしている台湾が、不用意にパンダを受け取れば──つまり台湾と中国は別の国で、“国際間”として授受があったとなれば──「国際条約に基づくご禁制のパンダを、なぜそんなに安易に受け取ってしまうの? 台湾は国際ルールにうといから要注意だよ、世界のみなさ〜ん!」と中国側から指弾されかねない。
そこで陳水扁総統は「多くの人が歓迎しているが、国際条約に違反できない」と“慎重に判断する”考えを表明したわけだ。ま、簡単に言えば、中国の申し出に対し「おっと、その手には乗らねーぜ」ってガードを固くしたことになる。

ふ〜〜〜む、外交ってなかなか面白いじゃないか!

身近な例で言えば、酒を飲みながら女の子を口説いていて、けっこう打ち解けたかなと思ってプラダでプッシュしてみたら、「あたし、そんな軽い女じゃないの!」とか言われて拒絶された、そんな感じ……。
自分のデート外交戦略の甘さに泣いたことのある野郎は、僕だけじゃあるまい!(←リキむなよ、オヤジ〈笑〉)

ところで、中国の“パンダ外交”は1960〜80年頃に盛んにおこなわれたのだけれど、82年に上野動物園フェイフェイを贈られたのを最後に終息している。
それ以降は、ペアを年間100万ドル(約1億円!)で貸し出す方式になった。ということで、世界じゅうにいるパンダの多くが、じつはレンタル・パンダなのだ!
しかも、いずれのレンタル・パンダもその国の言葉が理解でき、優秀な諜報パンダとして大活躍している(ジョーダン、ジョーダン〈笑〉)。

なお現在、上野動物園にいるリンリンは、92年に来日したのだけれど、そのさい上野生まれのユウユウと交換された経緯から“日本国籍”をもっている。同じく上野にいるシュアンシュアンは、メキシコ・チャプルテペック動物園所属で、いまは子づくりのために来日し長期滞在中なのだそうだ。

もし今回の台湾へのパンダ贈呈が実現すれば、82年のフェイフェイ以来23年ぶりということになる。言い換えれば、それほどに異例で、それほどに(外交的)意味をもった贈呈なのだ。
中国と台湾それぞれの思惑が、実際のところどういうものなのかはわからないけれど、日中問題と同様に因縁の深い関係だけに、今後も激しいつばぜり合いが交わされるのではないだろうか。

ところで、こんなに貴重なパンダ、贈呈されてすぐ死んじゃったらどうするんだろう?
考えてみれば、外交カードとして生きものを使うというのは、かなり勇気のいることだよな、双方とも。


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この記事へのコメント
上野動物園のリンリンが死去したと聞いて、びっくりしました・・・。
昨日のニュース番組で「リンリンの一般公開をお休み」と聞いたばかりだったのに・・・。
とても残念です。
リンリンのご冥福をお祈りします。
Posted by はなびら at 2008年04月30日 19:53
今回の日中パンダ外交に失望しました。こちらの記事を拝見してその思いをを更に強くしました。台湾の圧力に屈しない姿勢には頭が下がる思いです。現・福田政権は売国主義としか言い様がありません。
Posted by 2chから来ました at 2008年05月08日 01:49