2005年07月26日

友と古生物と酒の夜


僕の友だちで、学生時代に古生物を研究していた男がいる。
彼とは時々飲むのだけれど、そのことについて深く聞くこともなく最近に至っていた。ところがつい先日、彼の学生時代の武勇伝を聞いているうちに古生物の話へと及び、ついには地球の過去を延々と聞かされるハメとなった。

とにかくワケがわからない。白亜紀のアンモナイトがどーのこーの、デボン紀の三葉虫があーしたこーした、シルル紀まではあーたらこーたらだけど、カンブリア紀までさかのぼるとあーでもないこーでもない……

話についていけない。といって地蔵みたいに黙して座っているだけでは失礼だと思うから、酒を飲む合間に「なーるほど」「ほお〜」「あれま」とか何とか相づちを打っていたのだけれど、それだけでは相手も物足りないだろうと気を利かせて、僕は思いつくままに質問をした。

「ところで、縄文時代から弥生時代へと変遷した経緯について、お前はどう考えてるの?」

すると、彼は「え?」という表情をして、しばらく僕を見つめていたのだけれど、いきなり気色ばんで言い放った。

「そんな最近のこと知るわけねーだろ!」

僕がぽかんとしていると、彼はあきれ顔で説明してくれた。そもそも古生物というのは1億年以上も前の出来事を扱っているのであって、それに比べれば、たかだか2千年ほど前のことなんていうのは「最近」のことで、彼の眼中にはないのだそうだ。
2千年の5万倍のはるか昔が1億年で、あの恐竜天国のジュラ紀あたりですでに2億年前なのだから、確かに比べようもないほどの隔たりがある。
縄文・弥生時代どころか人類の登場さえ、古生物を研究する者にとっては「最近」なのだそうだ。

説明し終わった彼は、芋焼酎のお湯割りをぐいっと飲み干すと、飲み屋の小汚い天井を斜めに見上げた。その視線は、遠くの遠くの遠くを見つめているような感じで、まるで数億年前の地球の真実を見極めようとしているかのようだった。

数億年前に魅了され、縄文・弥生時代を「そんな最近のこと知るわけねーだろ!」と啖呵を切る彼に、僕は思わず──

「この男、大物!」

──と感心してしまい、酔いどれた自分を彼に差し向けると「いまオレは〜〜、モーゼンと〜〜、お前と握手がしたいぞ〜〜〜」と迫っていた。(←はたから見ると、ただの酔っぱらい2人組〈笑〉)

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