2005年07月27日

スロット


スロットATM朝日新聞(7月20日付)によると『大垣共立銀行(岐阜県大垣市)は、営業時間外に現金自動出入機(ATM)で現金を引き出す際、スロット画面が現れ、「777」など目がそろうと時間外手数料を無料にするなどのサービスを、8月8日から始める』のだそうだ。

ほう、こんなサービスまで出てきたか、と僕は驚いた。
さらに、記事はこう解説している『数字の「7」が3つそろう「スリーセブン」が出ると、時間外手数料105円が無料になる。 また、同行の特典付き口座「ゴールド」「スーパーゴールド」のロゴが3つそろうと、レシートに「大当たり」と記載され、店頭で現金1000円がプレゼントされる』

僕はこの記事を読みながら、ふと、ある対談を思い出した。
5〜6年前、当時内閣総理大臣だった小渕恵三氏と、作家の城山三郎氏が、NHKで対談した。詳細は覚えていないのだけれど、とても印象に残っているやりとりがある。
城山氏が首相に「日本をどのような国にしたいのか」という主旨のことを尋ねた。小渕首相は、例によって人の良さそうな笑みを浮かべながら「国民が堅実に健やかに暮らせる国にしたい」といった旨のことを答えた。すると城山氏がこのようなことを言った──

「最近、テレビなどを見てますと、宝くじの広告や、競馬などギャンブルの広告が、以前にもまして増えているように思えます。このような“射幸心(しゃこうしん)”をあおるものが増えているという現状を踏まえると、日本が堅実で健やかな国に向かっているとは、どうしても思えないのですが、いかがでしょう?」(うろ覚えだけれど、ほぼこのような内容だった)

これに対して、小渕首相はあきらかに言葉を詰まらせる瞬間があった。城山氏のあまりにも具体的な質問に対し、「そんなこと考えてもみなかった」というような(かすかではあるけれど)取り乱した表情だった。

問題は“射幸心”という点にある。
念のため三省堂の『現代国語辞典』をひくと、次のように記されている。「【射幸心】偶然(・まぐれ)の利益や成功をおさめようとする気持ち」
人誰しもこの射幸心はもっている。僕だってある。ラクしてひと儲けできるなら、そのほうがいい。
問題なのは、そのような僕らの心の性向ではなく、その心を揺らす側の在り方だ。つまり「射幸心をあおる」側の問題。

城山氏は、宝くじやギャンブルを存在悪として語っているのではないと思う。あの方はそれほどヤボな人ではない。対談での城山氏の焦点は、いかにも一発で儲かりそうなことを臭わせ「射幸心をあおる」宝くじの広告などを、テレビという“公器”(と主体者自身が言っているのだからそうなのでしょう)が、ほとんど垂れ流し状態でオンエアしていることへの警鐘、だと僕は思っている。

ちなみにこの僕は、宝くじも買えば、パチンコもするし、スロットに熱くなることもある。それは、自分が望んで楽しんでいるのだから、何ら問題はない。

さて、このたびの大垣共立銀行のサービスだ。
「スリーセブン」が出ると、時間外手数料105円が無料になり、ロゴが3つそろうと「大当たり」で1000円がもらえる、というサービス。
ささやかな額ではあるけれど、ATM画面がまんまスロット仕立てになっていて、ギャンブル心……射幸心を(あおるほどではないにせよ)“くすぐっている”ことへ、僕はどうも抵抗がある。

かつてのように銀行を“準公共機関”と見なす時代は、バブル以降なくなり、“営利機関”だという認識が強くなったとはいえ、やはり一般商店よりもさらにモラルへの気づかいがいる空間でないかと思う。
ATMは子供だって利用する。子供に限らず、ギャンブルなどに縁のない人にまで、スロットを“体験”させる──そんなことを思いついた銀行マンの感覚に、僕は少なからずゾッとした。

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オオカミ少年ってしってるよね?イソップ童話の寓話で、オオカミが出たオオカミが出たと村人にウソばかり触れ回っていた羊飼いが、本当にオオカミが出た時に誰にも相手にされずに食べられてしまうという話だよ。
オオカミ少年の系譜【神のいどころ】at 2005年07月29日 00:30