2005年08月09日

ラブ・フォーティ 第67話 〜テスト〜


(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )

第66話より続く

 タツエは、新田晴美のいちずな気持ちがうらやましかった。
「新田さん、ご主人が好きなのね」
「いえ、そんなんじゃなくて……」
「ああ、アツイ、アツイ」
 タツエは冷やかすように言った。
 たまらず晴美が恥ずかしそうに笑った。
 タツエは晴美がとてもけなげに思えた。きのうバッグを抱えて黙って付いてきてくれたこの人へ、お礼の気持ちも込めてひと肌脱いでみたくなっていた。

 タツエが口調を改めて言った。
「わかりました。ご期待にそえるかどうか自信ありませんけど、とにかくやってみましょう」
「本当に、いいんですか?」
「ただし、私のほうにも条件があるの」
「“条件?”」
「そう。新田さんが最初に言ったように、ご主人にやる気があるかどうかがいちばん大切よね。だから、私なりの方法で、ご主人が本当にテニスをしたいのかどうかテストをします。もしそのテストに合格したら、テニスを教えます。もし不合格だったら、この話はないということにするけど、それでいい?」
「結構です、けど、テストというのは?」
「まだ何も考えてないわ。いま言ったように、私なりのテストだから、あなたには納得できないものかもしれないけど」

「わかりました」晴美は電話を耳に当てたまま頭を深々と下げた。「塚越さんにすべておまかせします」
「そうさせていただくわ。それから……」タツエはちょっとためらってから切りだした。「ちょっとお伺いするけど、ご主人は健康面はどうなの?」
「“健康面?”」
「つまり、体のどこかに悪いところとかはない?」
「ええ、とくにないと思います。会社の健康診断では、飲みすぎには気をつけるように言われてるらしいですけど、基本的には“異常なし”と出ています」
「心臓、とかも?」
「え? ええ、心電図などでは問題ないと出ていますけど……、それが何か?」
 晴美の声がわずかに不安で陰った。

 タツエがあわてて言った。
「あらあら、ごめんなさい。とくに心配するようなことじゃないの。あのね、私、夢中になると知らぬまに厳しくレッスンしちゃうから、あらかじめ体力面のことだけは聞いておこうと思ったの。シゴいて心臓麻痺にでもなったら大変だからね」
 晴美が驚きを声にして聞いた。
「そんなに厳しいんですか?」
「厳しい……わね。どうする? いまからでも遅くないわよ。やめとく? ご主人、大変よ」
 タツエは淡々とした口調で聞いた。

 それとは対照的に晴美の声は弾んだ。
「とんでもありません。そうだと思ったからこそ、私、塚越さんにお願いしたんですから。いま、ますますお願いしたくなりました。なにとぞよろしくお願いします」
 晴美の乗り気に押されるようにしてタツエは応えた。
「わかりました。とりあえず、まずはご主人に会ってみましょう。“面接試験”ってところかしらね」
 言ってから、タツエは心の中で自嘲ぎみに笑った。もう人にはテニスを教えないって決めていたのに、またこんなことになってしまった、と。

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