2005年09月15日

ラブ・フォーティ 第104話 〜ライト〜


(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )

第103話より続く

 晴美はペダルを止めて、新田に振り返った。
「1時間くらいなら、なんとかこいでいられる。きょう昼間に来て、やってみたの」
 言いながら晴美は自転車を降りると、しゃがみこんでライトの向きを調節し始めた。
 それを見て新田は驚いた。自転車に近づいた。新しいライトが前輪付近に4個もついている。そして、そこから電線を導いて、後輪に発電機を四個取り付けてある。後輪が回転すると電気が起こる仕組みとなっている。
「どうしたんだ、これ?」
「つけたの。自転車屋さんでいろいろ部品を買って」
「晴美が?」
「そう。凄いでしょ」
 晴美が得意げに見上げると、新田の口が半開きになっていた。晴美はクスッと笑った。

 新田が気をとり直して聞いた。
「本気か?」
「本気よ」
「1時間もこいでられるのか?」
「アスレチックジムの自転車こぎだと思えばいいじゃないの。あなたの手伝いをしながら、ついでに私もスリムになる。どう? 一石二鳥でしょ?」
「もう一度聞くけど、本気か?」
「もう一度言うけど、本気よ」
「しかし……」
 新田が言いよどむと、晴美は声を固くした。
「あなたが最初にテニスをすると言ったとき、私は何て言ったかしら? テニスをやるならカッコよくやってちょうだいって言ったわよね。いま、あなたが練習しているのは、カッコよくなるためじゃないの?」
 沈黙した。貯水槽に秋の虫の音(ね)が満ちた。

 新田は黙ってバッグを開いた。ラケットとボールを取り出した。
 グリップをしごきながら壁の前に立った。晴美に振り向いた。
「なあ、俺たち、馬鹿に見えないか?」
 晴美が笑った。
「誰が見てるの?」
 新田の口もとに笑みがそよいだ。
 うなずいた。
 唇を引き結ぶと、ボールを地面に打ちつけた。打ちつけながら壁に向かった。
 すると背後で自転車の後輪が回転しはじめ、ライトが輝いた。
 新田は、その光の中へボールを打った。

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