2005年10月04日
ラブ・フォーティ 第123話 〜ベッタリ〜
(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )
第122話より続く
新田は話題を変えたかった。
「ところで、きょうは?」
「さっき言ったとおりだよ。新田の顔を見に来たんだ。どうだ、こっちは?」
「快適です」
「そうか。営業が恋しくないか?」
「しばらくはそうでしたけど、人間というのは、所変わると考えも変わるもんですね。いまはここが気に入ってますよ」
「そうか」芳賀は手もとに視線を落とすとひとりごとのように言った。「藤永の言ってたことは本当かあ」
「藤永君、何か言ってましたか?」
「営業には戻りたくないようだ、とね」
「こちらに移ったばかりですからね。そうしょっちゅう動かされていたらたまらないですよ」
「そりゃ、そうだ」
「本社のほうで僕を戻そうとしているとか聞きましたけど」
「上のほうも賛否両論で、どちらとも言えない状態らしい」
「芳賀さんはどう思ってるんですか?」
「そりゃあ、優秀な営業マンにはぜひ帰ってきてほしいと思っているよ。しかし、本人にその気がなければ、場合が場合だけに、俺は無理じいすべきではないと思っている」
「そう言っていただけると気が楽になりますよ」
「この件で、安斎はおまえに何か言ってこなかったか?」
「いいえ」
新田はいくぶん力をこめて答えた。
芳賀は首をかしげた。
「そりゃ、おかしいなあ。じゃあ、あいつは本人の意見も聞かずに、新田を営業部へ戻そうとしているのか?」
「ということになると思います」
「なるほど。だからかあ」
芳賀は思わせぶりな言い方をした。
新田は注文に応ずるようにすかさず尋ねた。
「“だから”というのは?」
「いやね、じつは社長から、おまえの真意を確かめてほしいと言われててね」
「社長って、春日社長のことですか?」
「ああ。じつは先日、偶然社長と個人的に話す機会があったんだ。そこで新田復帰の件について意見を求められて、俺なりの考えを述べたんだよ。そしたら社長が“機会があったら新田君の気持ちを確かめてくれないか”とおっしゃったんだ。ちょっと意外だったよ。春日社長といえば、安斎とベッタリの関係だと思っていたから、当然今回の件もすべて納得ずくで進んでいるものと思っていたんだ。ところが、あのときの話しぶりでは必ずしもそうではないようなんだ。で、いまおまえと話して、なるほどと思ったわけだ。今回は安斎がひとりで暴走しているってことか?」
「さあ、僕にはさっぱり……」
新田はとぼけた。
芳賀が改まって聞いた。
「春日社長は、早川の件では直接おまえと話し、そしてみずから断を下したことで少なからず心を痛めている。いまはできる限りおまえにとっていい職場環境にしてあげたいと思ってらっしゃるようだ。そのことを理解したうえで、おまえにもう一度答えてもらいたいんだが?」
芳賀は新田を正視した。
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Posted by love40 at 07:53
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