2005年10月11日
ラブ・フォーティ 第130話 〜オーナー〜
(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )
第129話より続く
忘れたころに藤永から電話があった。彼にしては珍しく興奮した声だった。
「やっとつきとめましたよ、例のニューヨークのマンションの売却先。どうやって調べたらいいのかわからなくて、外務省に勤めている僕の友だちにすがりつきましたよ。そいつにいろいろ手をまわしてもらって、探り当てました。
多喜食のマンションがその後どうなったかというと、なんと、日本の、ある画廊のものになっていました。画廊名は“スプリング・ヒル・ギャラリー”」
「“スプリング・ヒル・ギャラリー”?」
「かなり大きな画廊です。オーナーの名前もわかりました。あっと驚く人物でした」
「誰なんだ?」
「画廊名をそのまま日本語に訳してみてください」
「画廊名? “スプリング……春” “ヒル……丘”。ということは、“は・る・お・か”? 誰だ?」
「“スプリング”って、ほかにも意味がありませんでしたか?」
「“春”のほかに……、“スプリング……ばね”?」
電話の向こうで藤永がクスクス笑いながら言った。
「まだ、ほかにあるじゃないですか。もっと重要な意味が」
「おい、焦らすなよ。教えてくれよ」
「だめです。僕だってとても苦労したんですから。新田さんも少しは考えてみてくださいよ。中学生でも知っている基本的な意味なんですから」
「中学生でも知っている?」
「じゃあ、ヒントです。HOT SPRINGで“温泉”、MINERAL SPRINGで“鉱泉”という意味です。どうです?」
そうか、と新田は思った。
「“泉”か?」
「正解です。ということは?」
「“スプリング……泉”“ヒル……丘”。“い・ず・み・お・か”……。おい、あの泉岡か?」
新田の全身をたちまち鳥肌が包みこんだ。
藤永の声がうわずった。
「そういうことだったんですよ。安斎課長の部下・泉岡さんと同じ名前なんです。そこで、さらに調べてみました。あの泉岡さんの実家というのは大変な資産家ですね。数社からなる企業グループを経営していて、画廊もそのひとつということになります。画廊主は、あの泉岡さんのお父さんでした。驚きでしょ?」
「ああ」
「もう、たんなる偶然とは言ってられないですよね」
「ああ」
藤永はもう一度整理してみた。
「多喜食で、男女関係を原因にしてふたりの社員がクビになっている。その両方とも、事件のあと、その“恋の相手”はニューヨークのあるマンションに滞在している。滞在にどういう意味が込められているのかは不明ですが。そのマンションは多喜食が所有していたもので、のちにスプリング・ヒル・ギャラリーのものとなっている。このギャラリーのオーナー泉岡の息子とは、つまり泉岡隆一で、その彼の上司がつまり安斎次長です。この安斎次長を追うと、なぜか、10年前にクビになった田丸さんともつながるし、今度クビになった早川とも無関係とは言いがたい」
沈黙がさした。
新田が深くため息をついて言った。
「渦中に安斎あり、か……」
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Posted by love40 at 05:33
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