2005年10月30日

ラブ・フォーティ 第149話 〜チャンス〜


(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )

第148話より続く

 その夜、新田は眠れなかった。考えれば考えるほど恥ずかしかった。考えれば考えるほど腹が立った。「プロをめざしている有望な中学生とプレイできるなんて、めったにないチャンスよ」と晴美はそそのかしたが、いったい何のチャンスだと言うのだろうか。新田は、横で眠っている晴美を薄闇の中ににらみつけた。

 先ほど晴美にトオルのことを聞かれたとき、新田は「大変なガキだよ」とひとこと答えたきり、あとは言葉が出なかった。
 すると晴美が言うのだった。
「いくらテニスがうまいと言ったって、相手は子供なんだから、途中で投げ出したりはしないでね。5回のレッスンをきっちりやり遂げて、大人としての根性をちゃんと見せてあげなさいよ」

 晴美にまたはめられたと新田は思った。ここでギブアップするわけにはいかなかった。とにかく1週間後のレッスンのために対策を講じなければならない。新田は考えた。きょうのトオルの“振りまわし”は正確で執拗だったが、言いかえれば延々と単調なだけだった。ああいう振りまわしの迎撃練習は壁打ちでも長時間やってきたはずだ。それなのに、なぜあんなに簡単に追い詰められてしまったのだろうか。なぜあんなに恐怖感を募らせていったのだろう。結局その恐怖感が体をこわばらせ、自分の動きを壊すことになってしまった。

 新田は布団の中に身をうずめたまま、自分の気持ちをつぶさにチェックしてみた。恐怖はどこから起こったのか……。
 すでに深夜になっていた。
 体がひどく疲れていて、眠気を催してもいいころなのに、頭は答えを追い求めて過熱している。
 そうか!
 思い当たった。
 新田は心の中で叫んだ。
「相手を人間と思うから怖いんだ!」
 プロをめざしているトオルに、アマチュアが考えるような人間性を期待すること自体が間違っているのではないか。コートの上で発する彼の殺気は、テニスで人生をつらぬこうとしている者の凄さではないか。

 トオルを自分と同じような人間と思うから、心のどこかで彼に甘えようとしてしまうのだろう。トオルはそれを100パーセント無視する。そして無情なほど振りまわしは続く。そのことを勝手に寒々しいものとしてとらえるのは、こちらの心の問題ではないか。
 壁打ちのときは、壁のことなど考えたりはしない。どんなボールが返ってこようと、壁に喜怒哀楽をぶつけるようなことはしない。すべてはボールと自分の問題として解決しているじゃないか。今度はトオルを壁と思って、ボールにだけ集中してみよう。

続き(第150話)を読む

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この記事へのコメント
すごい中学生だけど新田さんがどう立ち向かうのか楽しみです。応援してます。
最近テニスを生で観たくなってきました。テニスコート見つけるとつい覗いちゃうんですよ(笑)

ランキングアップおめでとうございます☆
なんだかわたしも嬉しいです。
Posted by かあちゃん at 2005年10月31日 01:31
●●●かあちゃんさんへ●●●
>テニスコート見つけるとつい覗いちゃうんですよ(笑)
気がついたら、コートの中に立っていたりして・・・(笑)
>ランキングアップおめでとうございます☆
ありがとうございます!
これからも応援よろしくお願いします!
Posted by オヤジライター加久時丸 at 2005年10月31日 09:35