2005年11月02日
ラブ・フォーティ 第152話 〜テニスショップ〜
(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )
第151話より続く
レッスン3回目。45分でギブアップ。しかし新田は楽しかった。楽しみながら、くたばった。
レッスン4回目。40分でギブアップ。前回のレッスンよりはるかに厳しかった。トオルはほとんど声を出さないので、沈黙の中で厳しさがいっそう際立って感じられた。しかし新田は楽しく学べた。学んで、ぶっ倒れた。
うららかな4月の陽光の中、5回目のレッスンを迎えた。
最後のレッスンだけは何としてでも頑張りたかったが、新田の気迫以上にトオルの打球は凄絶を極めた。とくに相手の体めがけて打つ“ボディショット”を多発した。ボールを受けるほうは極めてさばきにくいショットで、新田を苦しめるだけ苦しめた。
ボディショットは人間そのものを狙っているため、テニスではあまりフェアではない打ち方とされている。しかしトオルは構わず新田にボディショットを打ち込んだ。まるで処刑場のようなありさまになった。
55分間、頑張った。あと5分というところで新田はギブアップした。トオルは顔色ひとつ変えずにベンチに戻ってくると、新田に目を合わせることもなく、うつむき加減で帰りじたくを始めた。
テニスコートにはどこからともなく桜の花びらが舞い込み、あちこちに淡紅色の斑点をつくっていた。新田はベンチにへたり込み、荒い息をしながら足もとの花びらを一枚拾い上げた。これが卒業証書ということになるのかな、とかすんだ頭の中で思った。
トオルは帰りじたくがすむと、いつもはさっさと帰るところを、そうはせずにベンチに座りなおした。新田を待たなければならなかったのだ。トオルは、本当はお金だけもらって勝手にラケットバッグを買いに行きたかったのだが、親が許してくれなかった。誰か大人がついて行かなければいけないと言うのだった。結局、事前の取り決めで、トオルは新田とともにテニスショップへ行くことになっていた。
トオルは体の各部を揉みながら、隣で難儀そうに片づけをしている新田を横目で見た。なぜこのオッサンはこれほどまでしてテニスをしているのだろう、と思った。いまからプロになれるわけでもないのに。このテニスコートにいる、ほかの大人たちみたいに楽しくやってりゃいいじゃないか、と。
テニスショップはトオルがいつも行っているところだった。前もって連絡してあったので、お目当てのテニスバッグは入荷されてあった。トオルはさっそくそのバッグへラケットやタオルなどを詰め、肩から掛けると姿見の前に立ってみた。鏡の中で、まだ幼さが残る顔に満足げな笑みが浮かんだ。トオルは新田に振り返ると、きまり悪そうに「ありがとうございます」と口ごもりながら言った。
テニスショップを出たところで新田は空腹を感じた。どうせ断られるだろうと思いながら、トオルを昼飯に誘ってみた。意外にもトオルは首を縦に振った。新田が何を食べたいか尋ねると、トオルは「牛丼」と答えた。「もっと高いものでもいいんだよ」と新田が誘いをかけても、トオルはうつむいたまま「牛丼でいいです」と言うのだった。
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Posted by love40 at 08:15
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