2005年11月03日
ラブ・フォーティ 第153話 〜センス〜
(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )
第152話より続く
牛丼屋はちょうど客が混み合う時間だった。配膳にやや手間どっているようで、ふたりは少し待つ形となった。手持ちぶさたな時間が流れた。新田は思いつくままに喋った。
「今度、会社でテニス大会があってね」
チラッと横目でトオルを見るが、まったく無反応だった。新田は自分の気持ちがしおれていくのを感じたが、無理やり言葉を続けた。
「トオル君は、しょっちゅう試合があるんだろ?」
トオルはカウンターに目を落としたまま、気のない様子でほんのわずかうなずくだけだった。
新田は心の中でため息をついた。
牛丼が運ばれてきた。トオルは「いただきます」と小声で言うと、すぐさまパクついた。あっという間にどんぶりの中身が減っていく。新田も追いかけるように箸を動かした。
いったん箸を止め、茶をひとすすりした新田の口から、ふと言葉が漏れた。
「そのテニス大会に、イヤなヤツが出るんだよ」
トオルの手の動きがピクッと止まった。新田は隣席でその気配を感じた。新田が顔を横に向けると、トオルの視線とぶつかった。そのまま新田は言った。
「そいつを叩きのめしたいんだけど、そいつのほうがぜんぜん強いときてる。参ったよ」
トオルはふたたび手もとに視線を戻し、どんぶりの中のご飯を口にかき込み始めた。
ふたりの間がつながりそうな気配がしたが、それでプツッと切れた。新田は消沈し、自分のどんぶりに向き合った。と、そのとき隣でトオルの声がした。
「その人、どのくらい強いんですか?」
「あ……」新田はうろたえた。「た、確か、インカレに出場したとか……」
「インカレですか。そうですか」
トオルの手にはすでにどんぶりはなく、その手を胸もとに持っていき腕組みをしていた。しかめっ面をして考え込んでいる。
新田は手の中のどんぶりを思い出し、急いで箸を動かした。
トオルが新田を見あげた。
「その人、いくつですか?」
「オジさんと同じ、40歳」
「体力的には同じくらいですか?」
「……たぶん」
「その人、どんな人ですか?」
「“どんな”?」
「その人の特徴ですよ。それをもとに勝つ方法を考えるんです」
新田はトオルの質問に面食らいながらも、安斎営業部次長について思いつくままに語った。仕事ができること、常に出世頭だったこと、服装のセンスがいいこと、女子社員に人気があること……。
トオルはじっと聞いていた。その表情には中学生の幼さも、その反対の生意気さもまったく感じられなかった。ひたすらテニスの戦略を練る、真剣な顔があった。
新田が話し終わると、トオルは考え深げにうなずいた。それから新田を見上げ、口もとに笑みを浮かべた。
「もしかすると、その人を攻略できるかもしれませんよ」
「えっ! ……本当かい?」
「はい」
続き(第154話)を読む
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Posted by love40 at 07:53
│Comments(2)
この記事へのコメント
こんにちは。
面白くなってきましたね。単純ですいません^^;
ついこの間だんなと中学時代の話になって思ったんですが、(小説に関係ないことなんですけど)
今振り返ってみると中学時代って大切だなーって思うんです。小学生と比べるといっきに大人の世界に近づくんだけど、高校生と比べるとまだまだ子供で…一番不安定な時期かなーって思いました。
まだトオル君の一面しか知らないけど、どんな中学生なのかなーって思いながら読んでました^^
面白くなってきましたね。単純ですいません^^;
ついこの間だんなと中学時代の話になって思ったんですが、(小説に関係ないことなんですけど)
今振り返ってみると中学時代って大切だなーって思うんです。小学生と比べるといっきに大人の世界に近づくんだけど、高校生と比べるとまだまだ子供で…一番不安定な時期かなーって思いました。
まだトオル君の一面しか知らないけど、どんな中学生なのかなーって思いながら読んでました^^
Posted by
かあちゃん
at 2005年11月03日 20:55
●●●かあちゃんさんへ●●●
>今振り返ってみると中学時代って大切だなーって思うんです。
>小学生と比べるといっきに大人の世界に近づくんだけど、高校生と比べるとまだまだ子供で…
>一番不安定な時期かなーって思いました。
そう言われてみると、高校生の時に比べ、中学生の時の思い出のほうが鋭く残っていて、子供でも大人でもない、妙な感覚がともなっていますね。
確かに「不安定な時期」ですよね。言い換えると「感性の揺らぎが一番旺盛」な時期とも言えますね。
あらゆる可能性のある年頃・・・。懐かしい、と言うか、恋しいですね。
>今振り返ってみると中学時代って大切だなーって思うんです。
>小学生と比べるといっきに大人の世界に近づくんだけど、高校生と比べるとまだまだ子供で…
>一番不安定な時期かなーって思いました。
そう言われてみると、高校生の時に比べ、中学生の時の思い出のほうが鋭く残っていて、子供でも大人でもない、妙な感覚がともなっていますね。
確かに「不安定な時期」ですよね。言い換えると「感性の揺らぎが一番旺盛」な時期とも言えますね。
あらゆる可能性のある年頃・・・。懐かしい、と言うか、恋しいですね。
Posted by
オヤジライター加久時丸
at 2005年11月04日 08:31




