2005年11月22日
ラブ・フォーティ 第172話 〜リラックス〜
(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )
第171話より続く
6面のコートに選手が散っていった。
10分間のウォームアップが始まった。
安斎、芳賀もそれぞれの相手と対し、ボールを打ち始めた。
新田の第1回戦は、コート数の関係上、次の時間帯となった。
新田がクラブハウスのベンチに腰かけ、窓越しにコートを眺めていると、春日が近寄ってきた。気づいて新田は直立不動の姿勢をとった。
春日は、新田にリラックスするよう手ぶりで示した。
「久しぶりだね、新田君」
「はっ」
「見違えたよ。ずいぶん精悍になったじゃないか」
「はっ」
「仕事のほうはどうかね?」
「食研の面白さがだいぶわかってきました」
「そうかね。芳賀君から君の気持ちは聞いた。了解した。食研は多喜食の知的財産だと私は考えている。どうか食研の繁栄のために、君の力を多いに発揮してくれたまえ」
「はっ、頑張ります」
「ところで、君はテニスは長いのかね?」
「いえ、始めてまだ7カ月です」
春日は顎を引きぎみに驚いた顔をした。
「ほう、それは見ものだね」
「向こう見ずなだけです。お恥ずかしい限りです」
「“向こう見ず”か。いい言葉じゃないか。“向こう見えず”は困るが、“向こう見ず”はときとして必要かもしれんな。ぜひ存分に戦ってくれたまえ。失敬するよ」
「はっ」
新田はかしこまって礼をしたあと、春日の背を見送ってから、ふたたびコートへ目を戻した。
試合がいっせいに始まった。
どのコートを見ても、中級者以上であることがよくわかった。ゲームの運びにまがりなりにもリズムというものがあり、見ている者を興ざめさせるような凡ミスがあまりない。
なかでも安斎は群を抜いてうまかった。ほかのプレイヤーとの違いは、その余裕だった。安斎は70パーセントくらいの力でプレイをしている。それでじゅうぶん相手と戦えるのだ。それゆえ動きにまったく無理がなく、美しさだけが目立っている。美しくて圧倒的に強い。
新田は度肝を抜かれていた。ほぼ1年前、あの社員旅行の朝に目撃した安斎のプレイは、うまいとしか記憶になかった。それは、当時テニスに不慣れな新田の目を通したもので、まるで子どもが描いた絵のようなあいまいさで脳裡に記憶されているものだった。しかしいま、ある程度テニスというものがわかってきた新田にとって、眼前の安斎のプレイは、美技と脅威の細密画を見せつけられているような思いだった。新田が太刀打ちできるような相手ではなかった。新田は自分の体から血の気が引いていくのがわかった。
続き(第173話)を読む
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Posted by love40 at 08:03
│Comments(2)
この記事へのコメント
さっそく遊びに来ちゃいました^^
とうとうこの日が…そして試合が始まりましたね!(新田さんはまだだけど^^;)ドキドキです。スポーツでも楽器でも、できる人から見ると凄さがよく分かるって事ありますよね。新田さんがんばれー!
それにしてもイギリス生まれとアメリカ生まれのスポーツは正反対なんですね。言われてみればそうだった^^;
やっぱりお国柄が出るんですね。日本の場合はどうかな?関係ありませんがわたしはイギリスの音楽が大好きです^▽^
とうとうこの日が…そして試合が始まりましたね!(新田さんはまだだけど^^;)ドキドキです。スポーツでも楽器でも、できる人から見ると凄さがよく分かるって事ありますよね。新田さんがんばれー!
それにしてもイギリス生まれとアメリカ生まれのスポーツは正反対なんですね。言われてみればそうだった^^;
やっぱりお国柄が出るんですね。日本の場合はどうかな?関係ありませんがわたしはイギリスの音楽が大好きです^▽^
Posted by
かあちゃん
at 2005年11月22日 11:34
●●●かあちゃんさんへ●●●
>スポーツでも楽器でも、できる人から見ると凄さがよく分かるって事ありますよね。
新田の目つき(スポーツアイ)が変わったんですよね。そのぶん、安斎の怖さがわかってきた。どうなることか・・・
>それにしてもイギリス生まれとアメリカ生まれのスポーツは正反対なんですね。
そうなんです。
これはスポーツを見るうえで、とても重要なことなんです。
>やっぱりお国柄が出るんですね。日本の場合はどうかな?
やっぱり(柔道や剣道などのようなものから、野球道のようなものまで)「道」という精神性が多かれ少なかれ影響してるような気がします。それに関する、良し悪しとなると、一概に申せませんけど・・・
>関係ありませんがわたしはイギリスの音楽が大好きです^▽^
どんなバンドがお好きなんですか?
>スポーツでも楽器でも、できる人から見ると凄さがよく分かるって事ありますよね。
新田の目つき(スポーツアイ)が変わったんですよね。そのぶん、安斎の怖さがわかってきた。どうなることか・・・
>それにしてもイギリス生まれとアメリカ生まれのスポーツは正反対なんですね。
そうなんです。
これはスポーツを見るうえで、とても重要なことなんです。
>やっぱりお国柄が出るんですね。日本の場合はどうかな?
やっぱり(柔道や剣道などのようなものから、野球道のようなものまで)「道」という精神性が多かれ少なかれ影響してるような気がします。それに関する、良し悪しとなると、一概に申せませんけど・・・
>関係ありませんがわたしはイギリスの音楽が大好きです^▽^
どんなバンドがお好きなんですか?
Posted by
オヤジライター加久時丸
at 2005年11月23日 08:54




