2005年11月24日

ラブ・フォーティ 第174話 〜パーフェクト〜


(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )

第173話より続

 1回戦は、男女合わせて12組の試合がおこなわれ、それぞれに2回戦進出者が決定した。泉岡も危なげない戦いで勝ち進んだ。午前の試合はそこで終わり、昼食となった。新田は、当初の予定どおり家族とは食事をしなかった。せっかく高まってきた集中を、家族団らんの会話で途切れさせたくなかったからだ。新田は皆から離れ、隠れるように食事をすませた。それから藤永の携帯に電話をした。

「おめでとうございます。問題ない勝ち上がりでしたね」
「相手の実戦不足に助けられたよ」
「いえ、それだけじゃないですよ。新田さんがこんなに強いとは、正直言って思っていませんでした。とても7カ月の腕とは思えませんね」
「それにしても安斎の強さは別格だな」
「凄いものがありますね。芳賀さんが次に安斎さんと当たりますけど、うまく芳賀さんのパワーがヒットすれば、ひょっとするかもしれませんね」
「ああ、そう願いたいね」
「ところで新田さんは、いまどこにいるんですか?」
「僕からは君が見えるんだがね」

 通話が中断した。しばらく藤永は新田を探していたが、見つからなかった。
「どこにいるんですか?」
「藤永君のところから斜め右、コートを突っ切って、さらに道路を越えると、バスの停留所があるだろ? さらにその先に児童公園があって、そこのベンチに座っている。わかったか?」
「あっ、なぁるほど、そんな所に……。わかりました、わかりました」遠方で藤永がさりげなく頭を下げた。「ところで、新田さんの次の対戦相手のことですが……」
「ああ、流通部の倉石君だ。彼の試合は、僕のところからコートふたつ挟んだ向こうだったので、ほとんどチェックすることができなかったよ。ただ、感じとしてはベースラインから前に出てくることはないように見えたんだが……」
「ちょと待ってください」
 そう言って藤永は黙った。
 
 新田が目を凝らして見ると、藤永は手帳をめくっているようだった。どうやら観戦メモをつけているらしい。
「ええと……、倉石は27歳ですね。僕よりひとつ年下です。レベルは、僕の見たところでは中の下と言ったところです。確かに、新田さんのおっしゃるとおり、倉石はベースラインプレイヤーですね。ネットに詰めてボレーを打ったりすることはまれです。逆に相手にネットに出てこられるのも得意でないようです。だいぶボレーにやられています。ネットプレイが総体的に苦手なようですね。それと、彼の場合バックハンドにミスが多いですね」

「わかった。助かるよ。ところで……、安斎はどうだい?」
「ミスが見当たらないですね。専門家なら安斎さんの欠点を発見できるのかもしれませんが、僕のような者にはパーフェクトに見えます」
「なるほど……。ありがとう」
 電話を切ると、自然と新田の口からため息が漏れた。

続き(第175話)を読む


ランキングに投票ありがとうございます。たいへん励みになります。