2005年12月03日

ラブ・フォーティ 第183話 〜ジャッジ〜


(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )

第182話より続く

 新田は次の仕掛けをした。
 第7ゲーム、第4打目のサーブ。新田はサーブポジションにつくと、いつも以上に左足をベースラインぎりぎりに置いた。それからサーブ動作を開始した。ボールをトスアップすると同時にラケットをテイクバックする、そのとき右足に体重がのり、スウィングとともに左足に重心が移動しかかったとき、新田はわざと左足を前へずりこんだ。
「フットフォルト!」
 主審の声が響いた。
 新田は構わず打った。安斎は「フットフォルト」のコールに反応してボールを見送った。新田はわざと大げさに首をかしげ、主審に聞いた。
「フットフォルト?」
 主審はしっかりとうなずいた。
 新田は足もとに視線を落とし、しばらく考えるふりをし、また首をかしげ、主審に視線を戻した。
「本当にフットフォルト?」
 主審はふたたびうなずいた。
 新田は眉根を寄せしつこく聞いた。
「本当に?」
 主審の顔がわずかにこわばり、そのこわばった顔を縦に振った。
 新田は下唇をせりだし、もう一度白いベースラインを見おろし、それから線審ポジションを見た。そこには誰もいない。
 この大会では線審を置いていないため、審判台の上の主審がひとりですべてをジャッジしている。新田はそれに不服だと言わんばかりの仕草をしたのだ。中年の女性主審はムッとした顔をして言った。
「確かにフットフォルトです。しっかり見ていますので、セカンドサーブから試合を続行してください。レッツ・プレイ!」
 新田の仕掛けはこれで張られた。

 新田のセカンドサーブを、安斎は甘くリターンしてしまった。新田はダッシュをかけボレーで打ち込み、得点した。
「ゲーム。ニッタズ・ゲーム」
 6ゲームぶりで新田はゲームを取った。ゲームカウントは2─5で、依然として新田は劣勢だったが、あとがないということが逆に気持ちを強くさせていた。
 90秒のコートチェンジ・タイムに入ると、安斎は“妙なサーブミス”の件を整理しようとした。新田と芳賀は故意にサーブミスをやっているのだろうか? 故意にやっているとしたら、彼らはどうしてそんなことを申し合わせたのだろうか? わざわざ第1打目のサーブを失敗して何のメリットがあるのだろうか? 彼らのターゲットは自分だけなのだろうか? それともこの大会でほかにも彼らのターゲットになっている人間はいるのだろうか?
 安斎は考え、考えれば考えるほど混乱を極めた。

 主審がゲーム再開を告げた。
 両選手がベンチから立ち上がった。
 安斎はサーブポジションについた。深呼吸をして気持ちを清めた。

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