2005年12月07日

“氷海のスイマー”ルイス・ピュー


氷海のスイマー「最大のライバルは自分自身ですね」などと言うことがある。また、そのような発言をよく人から聞くこともある。
何ごとにおいても、結局は自分自身の弱さとの闘いであって、それを克服してこそ「勝利」が待ち受けている、という意味合いなのだろう。

たとえば、学生時代などの勉強。
いつもテストなどで友だちと成績を争っているにしても、日々遭遇するのは、ひとり部屋の中での睡魔のくり返しだったりして、深夜の朦朧とする頭で「酸加水分解によりニトリカル基をカルボン酸に変えるってことは、RCH(CN)(NH2)+2H2Oだからあ……、てゆーか、わあああああ、そんなことどーでもいいから、オレの現実に睡眠をくれー!」って、身もだえしたりしている。確かにライバルはいて、成績によって進学は左右されるとわかっていても、時として“睡眠様”にひれ伏してしまう……。こういった状態を「自分に負けた」と言う。

たとえば、会社での話。
“あなたも5歳若返るダイエット”を、女の意地をかけ決死の覚悟で始めてわずか3日目に、同僚OLの社内不倫話をネタに興味本位にズルズル酒を飲むことになり、結局最後は、禁断の“締め”の深夜ラーメンを喰らってしまうことに……。こういった状態を「自分に負けた」と言う。翌日、更衣室で、ほかのOLの制服姿より一段とパンパンになっているわが容姿に滅入る。

したがって、確かに日々において「最大のライバルは自分自身」であると言ってもいいのだろう。
オリンピックに出場するような、つねに競合し対決しているアスリートでさえ「ライバルは自分だ」と公言してはばからないのだから。まことに厳しい。

でも、あえてきょうだけは「やっぱり他人というライバルがいてこそ競い続けられる、日々の壮絶な鍛錬であり、“ライバルは自分だ”と言うのは、厳密には違うんじゃないの?」と思ってしまう出来事を見つけた。

ロイター通信(12月3日付)は、こんな人物を紹介している──
『水着、水泳帽、そしてゴーグルのみ着用。遠距離水泳選手のルイス・ピュー氏(35歳)が、氷の浮かぶ南極水域を“制覇”しようとしている。彼は今年8月に北極海での遠泳に成功したが、今度は南極水域で3回に渡って遠泳にチャレンジすることになった。成功すれば、地球上で最も冷たい海を両方泳いで“制覇”した世界初の人間となる』そうだ。

氷海のスイマー”とも呼ばれているそうだけれど、そんなことをやっている人物は、おそらく彼1人ではないか。したがって、ライバルはいない、ということになる。

さらに記事はこう伝えている──
『3回のチャレンジでは科学者がモニターを行うことになっており、最終チャレンジでは水温が氷点下となるベルナツキー基地付近の海域(南緯65度)を1キロ泳ぐ予定となっている。「僕にとって、今までで最も厳しい挑戦となる。おそらく北極地方の海水よりも冷たいだろうね」』

ピュー氏は、ノルウェーのスピッツベルゲン諸島、北緯80度の海域を約1キロ泳ぎ、最北端での最長遠泳記録保持者でもあり、それよりもさらに苛酷になるだろうと語っている。しかも、その厳寒たる苛酷さに加え、氷海では人間とは比べものにならないほど速く泳ぐヒョウアザラシに襲われる可能性もあるらしい。しいて言えば、ヒョウアザラシに襲われてまで泳ぐピュー氏に、ライバルはヒョウアザラシしかいないかも(笑)。

さて、ピュー氏の想像を絶する挑戦を支える、想像を絶する訓練法をご紹介しよう。ロイター通信は、次のように描写している──
『南アフリカ・ケープタウンの港では、漁業会社の貯蔵室で、小さなプールに氷を浮かべて訓練するピュー氏を見て笑う漁師もいる。ピュー氏のアシスタントは、水温を1℃以下にしようと氷をたくさん用意し、訓練中は常に科学者が彼の心拍数をモニターしている。
またあるときは、室温マイナス35度の魚保管用冷凍庫にルームサイクルを持ち込み、トレーニングを行った』

知られざる世界への挑戦──つまりは通常レベルのライバルなき世界と言うべきか、あるいは氷海の「男バカ一代」と称するべきか。
記事には、何人かの専門家のコメントが載っているのだけれど、ひとことで言えば「きわめて特殊な体質」だということに尽きるようだ。

氷海遠泳……。
何がピュー氏をそこまで駆り立てるのかわからないけれど、「オンリー・ワン」を突き進む男。ケープタウンの漁師が笑ってしまうほどの、前代未聞のトレーニング世界……。
ピュー氏には、ぜひ、この言葉を言ってほしい。
最大のライバルは自分自身だ


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この記事へのコメント
世の中、実に色々な方々がいらっしゃる@c@
寒さで赤くなっている肌を拝見するだけでヒョウアザラシに勝ってる!という感じがするのですが、やはりピュー氏にとってはゴールしてなんぼなんでしょうね。。。
がんばって欲しいです。

P.S.この写真、夏に見たいデス。。。笑
Posted by mihoris at 2005年12月12日 14:18
●●●mihorisさんへ●●●
>寒さで赤くなっている肌を拝見するだけでヒョウアザラシに勝ってる!という感じが・・・
かなりユニークな観察法ですね(笑)
勝ちますか!
よかった!(笑)
>やはりピュー氏にとってはゴールしてなんぼなんでしょうね。。。
いっぱいスポンサーもついてますしね(笑)
>この写真、夏に見たいデス。。。笑
ダメダメ、冬!(←鬼のような発言〈苦笑〉)
Posted by オヤジライター加久時丸 at 2005年12月12日 22:50