2005年12月09日
ラブ・フォーティ 第189話 〜マッチポイント〜
(最初からお読みになりたい方はこちら→【ラブ・フォーティ 第1話】 )
第188話より続く
ワンプレイが決着するたびに「ロブ飽きた」が起こった。
新田の“100分の1”のロブはいっきに精度を失った。長くなってラインアウトし、短くなってスマッシュされた。
0─15から一転して崩れ、15─15、30─15、40─15と、新田はたちまち追いつめられた。もうどうすることもできなかった。
安斎はマッチポイントを迎えた。あと1ポイント取れば、この長ったらしくて不愉快な試合にケリがつく。おまけに、そのマッチポイントを自分のサーブで決めることができるのだ。安斎は久しく忘れていた爽快感に包まれていた。ファーストサーブはセンターラインぎりぎりに思いきり打ちこんでいくことにした。どうせ決めるのなら、サービスエース狙いで気持ちよく勝ちたい。
「ロブ飽きた」は起こらなかった。その必要はもうなかった。新田のロブの神通力は失せていた。
コートは静まりかえった。安斎の集中力を汚すものは何もなかった。
安斎はまず最高のボール軌道をイメージした。さらにその軌道の起点に最高のサーブ動作をイメージする。まるで映像を逆回しするようにサーブ全体を組み立て、完了するやいっきに体を起動させた。
ボールをトスアップする。と同時にラケットをテイクバックした。それらに連鎖して安斎の体は伸びやかにしなる。しなりの極致から爆発的にラケットは振り出される。頭上高く待ちうけるボールは、容赦なくラケットでぶっ叩かれ、黄色い弾頭となった。
新田はまったく動けなかった。きょうの3試合で受けた50本ほどのサーブの中で、最も凶暴で、最も繊細なサービスエースだった。ボールは、サービスラインとセンターラインの交点を針で刺すようにバウンドし、新田の横を疾風となってすり抜けていった。
……終わった、と新田は思った。失意ではなく、虚脱が頭を押さえつけた。新田はうなだれ、ネットに向かって歩き始めた。コートの表面にはフットワークの跡が無数に散らばり、まるでそれが自分自身の心の傷跡のように、新田には見えた。
新田がコートの中ほどまで歩み出たとき、異変に気づいた。新田は重い頭を上げ前方を見た。安斎が、審判台の足もとから主審を見上げ、やや興奮ぎみに何か言っている。主審は首を横に振っている。新田は足を止め、その場からふたりの様子をうかがった。
主審を務める女性が、自分の両目を指さしながら凛とした声で言った。
「しっかり見ていました。間違いなくフットフォルトです。足がラインから出ていました。セカンドサーブをおこなってください」
安斎がさらにクレームを続けようとすると、彼女は険しい声を発した。
「レッツ・プレイ!」
観客のざわめきが波打った。
安斎は、なかば呆れた顔を主審に見せつけ、肩で大きくため息をついてからポジションへ戻っていった。
新田にはフットフォルトのコールが聞こえなかった。聞こえていたのかもしれないが、ラストサーブへの喚声だと思い込んだのかもしれない。半信半疑のまま新田もポジションへ戻った。
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Posted by love40 at 07:55
│Comments(2)
この記事へのコメント
お早うございます。モーニングコールでした。
Posted by
風の旅人
at 2005年12月10日 05:28
●●●風の旅人さんへ●●●
>お早うございます。モーニングコールでした。
わああ、ごめんなさい!
コメント通知欄を確認したつもりで、見落としてました!
現在、夜9時すぎです。でもきょうは(ひどく風邪をひき)日中寝ていたので
いま起きたところ、という感じです。
僕としては、今が、きわめて自然と「お早うございます」の気分です(苦笑)。
いずれにせよ、たいへん失礼しました。
申し訳ありません!
>お早うございます。モーニングコールでした。
わああ、ごめんなさい!
コメント通知欄を確認したつもりで、見落としてました!
現在、夜9時すぎです。でもきょうは(ひどく風邪をひき)日中寝ていたので
いま起きたところ、という感じです。
僕としては、今が、きわめて自然と「お早うございます」の気分です(苦笑)。
いずれにせよ、たいへん失礼しました。
申し訳ありません!
Posted by
オヤジライター加久時丸
at 2005年12月10日 21:12




